破産手続は申し立てる個人及び会社ごとの手続であり、破産者として生じる様々な法的義務は、あくまで当該個人及び会社にのみ効力が帰属します。
したがいまして、会社の代表者が破産を申し立てた場合、管財人に対する調査協力義務などを初めとする、破産者であることによって生じる様々な法的義務は、あくまで破産者である当該代表者にのみ帰属します。
代表者が破産したからといって、その妻や子供の所有する財産が取り上げられたり、妻や子供が破産債権の支払義務を負わされたり、管財人に対して所有する財産を報告する義務を課せられたりすることはありません。
もっとも、例えば、妻や子供が代表者名義の自宅に居住している場合には、代表者の破産手続の中で当該自宅が売却されることによって、自宅から引っ越さなければならないという事実上の影響をうける場合もありますし、代表者の所有する財産が妻や子供に不当に移転されていれば、管財人の否認権の行使によって、受領した財産を取り戻されてしまうこともあります。
また、上記のような財産の移転がなくても、各資料からその疑いをもたれるような不審な状況があれば、管財人から妻や子供に対して様々な照会や調査が行われることもあり、その結果、破産者ではない妻や子供の所有する財産についても一定の報告が必要となる場合もあります。
このように、破産申立を検討するに際しては、代表者のご家族にどのような事実上の影響が及びうるのか、どのように工夫すればそれを回避できるのか等を、事前に、事案の個別事情に応じて十分に精査・検討をしておく必要があり、その検討は時として処理方針の決定にも大きな影響を及ぼすものとなります。
ですので、破産申立の可能性をお考えになられた際には、できるだけ早い段階で専門の弁護士に個別のご相談をされることをお勧めします。