サービサーについての誤解

会社を破産させた場合,会社の代表者は金融機関の会社の債務について連帯保証をしているので,同時に破産の手続を行うことが一般的といえます。

会社が破産した場合の手続き

破産法第5条6項を引用させていただきますと,
「法人について破産事件等が係属している場合における当該法人の代表者についての破産手続開始の申立ては、当該法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができる」
としております。
これは会社の代表者と会社が同じ裁判所で並行して破産手続きを進めることを想定している規定であると考えられます。

このように,会社の代表者は会社が破産する際には,同時並行で破産の手続きを行うのが一般的ですが,代表者の破産は必須ではありません。

 もちろん,債権者からすれば,「支払いもしないのに破産もしない」状態を当然に受け入れることはできません。
 したがって,代表者が破産をしない場合は,支払いができないことと破産をしないことについての合理的な説明や,一定額の支払いを提示し,交渉を行う必要があります。

破産手続き以外の対処方法

 例えば保証協会などの債務が残った場合は,破産をせずに保証協会と話し合いを行い,代表者の収入の状況に応じて,支払いを継続することで,破産をせずに済むことがあります。
 特に,代表者がご高齢で,他に見るべき資産もないような場合は,保証協会はこのような手法に応じてくれることが多いのではないかと思います。年金その他から月額1万円程度を保証協会に支払い,破産をせずに推移しておられる元代表者の方は少なくありません。
 また不動産など見るべき資産があるような場合でも,不動産の価格がさほど高額でない場合は,高齢の債務者が今後の生活に必要不可欠であることを説明することで,不動産の処分をせずに済む場合もあります。
 もっとも,見るべき資産があるような場合は,このような対応は難しくなりますし,保証協会に少額の支払いで推移する場合でも,一方的に「ある時払いの催促なし」のような状態にするのではなく,資産,収入の状況を保証協会に説明し,一応の承諾を得ることが必要であると考えています。

サービサーの債権について

 会社の代表者の破産に関連して巷でよく「サービサーに債権が移ったから,サービサーから債権を買えた」とか言っておられるのを聞きます。以前は会社の整理やМ&Aに際して,サービサーから債権を買い取って,整理を行った事案も見受けられました。
 しかし,サービサーが債権を必ず安価で手放してくれるかはわかりません。
特に,金融機関が債権を保有したままで,サービサーが債権回収の代行を行っているにすぎない場合,あくまで債権者は金融機関であって,サービサーではありあせん。
この場合,サービサーはあくまで窓口ですので,「サービサーは債権を安く仕入れているのだから,安い金額でも払っておけば,手を放すだろう」と考えること自体が間違いです。サービサーへの移管は,サービサーへの金融機関からの債権譲渡なのか,それとも金融機関が回収委託したにすぎないのかは初めにチェックするべきです。

複数のサービサーが債権が持っている場合

 また,複数のサービサーが債権を持っている場合,サービサー全社が足並みをそろえた対応をしてくれるという保証はどこにもありません。
 私の印象では,金融機関はリスケ交渉の場面などで,他の金融機関と足並みをそろえ,抜け駆けはしないように思いますが,サービサーはサービサー間で足並みをそろえてくれるというわけではなく,各自の判断をしているように思います。
 ですから,あるサービサーとの間では話がまとまったのに,他のサービサーとの間では話がまとまらないということも十分にあります。
 会社代表者の方の中には,「保証協会は月1万円程度で対応してくれる」ということがサービサーにも該当すると考えておられる方が散見されます。
しかし,サービサーはあくまで純然たる民間企業であり,保証協会のように公的な側面の強い会社ではありません。保証協会が少額の支払いでの推移に応じてくれることがあるのは,保証協会の公的な側面などによるものであって,サービサーに対して同じ理論が通用すると考えるのは誤りです。

まとめ

 すなわち,会社代表者の連帯保証債務がサービサーに移行した場合,まずそれが債権譲渡なのか,単なる回収代行なのかを確認すること,また,「サービサーは安く仕入れているのだから,安く解決できる」と安易に判断しないことが大切だと考えます。
 また,サービサーが登場する場面とは,会社がかなり前から約定に従った支払いを行っておらず,また,リスケ交渉もできなかった(しなかった)場面であるといえます。
 会社は,金融の世界では破綻して(支払い不能状態になって)いるわけですから,代表者も実質的には破綻(支払い不能)状態と考えるべきです。当面は代表者が破産をせずに推移することを目指すにしても,どこかのタイミングで破産への方針転換を余儀なくされることもあります。
破産せざるを得なくなってから,直前に行った行為が問題になるのは避けるべきですので,財産の処分などについて慎重な対応を心がける必要があります。
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