弁護士による会社破産の申立ては,まず,代理人弁護士が債権者に対して,一斉に受任通知を発送することから始まります。受任通知の発送の日に,会社は事業を廃業し,労働者についても解雇してしまうのが通常ですので,この日は会社の破たんが社会的に明らかになる日でもあります。弁護士の業界ではこの日を「Xデー」と呼ぶことがあります。
もちろん,Xデーの前から破産に向けた準備は行われており,経営陣もXデーを事前に把握しているのが通常です。
債権者に破産の受任通知を発送すると,仕入元の債権者から受任通知直前の仕入れについて苦情をいただくことがよくあります。「破産の予定があったのに,仕入を受け入れるとは酷いではないか」というものです。中には「詐欺にあたる」と厳しい意見を述べられる方もいます。
しかしながら,会社の破産においては,Xデーが事前に漏れてしまうと,いわば「取付騒ぎ」のような状態となりえます。こうなると,勝手に換価性のある物を持って帰ってしまったりする債権者が現れ,債権者の公平が図れません。
そのため,破産の予定は経営陣しか知らないのが通常で,仕入担当などにはXデーを伝えられておりません。また,仕入担当に「仕入をしないように」と命じておくことも,憶測を呼びますので,あえて行わないのが通常です。