Q.会社を破産させる際に、優良な部門だけを残す法的な枠組みはありますでしょうか?
質問
会社を破産させる際に,優良な一部門を息子に残そうと思います。法的な枠組みを教えてください。
回答
会社を破産させる前に優良な一部門を残そうとされる方は多いかと存じます。
その場合,次の方法が考えられます。
① 会社分割による方法
これは沈みゆく会社の一部門をあたかも救命ボートのように社外に独立させる手法です。
大がかりな組織で「部門」そのものを法的な明確性を維持しながら,独立させうる点メリットがあります。
しかし,この方法は会社法による公告や登記の手続が必要であるので時間を要し,煩瑣な手続きですので,一般的な中小企業にはお勧めできません。
② 営業譲渡による方法
この方法は,親族等が設立した別会社や親族個人に,破産予定の会社の事業そのものを売り渡すと言う方法で,優良な事業を破産後も維持しようというものです。
①会社分割に比べて,必要な手続きは少ないこと,他方,営業譲渡契約書等の作成により,譲渡される資産の内容が明確になりますので,のちに管財人の精査にも対応しやすいといえます。
もっとも,事業の価値(のれん代等を含む)を巡って,管財人との間で紛争になる可能性があります。特に,無償で親族に譲渡したということになると,破産管財人や債権者の理解を得ることは難しいといえます。
③ その他の方法
①会社分割や②営業譲渡にもよらず,事業の一部門を残す方法としては,たとえば平取締役の息子さんがそのまま独立して,新事業を立ち上げ,独自に営業活動を行うことが考えられます。旧会社からは,法律上何も承継せず,単に取締役個人の技術や信用を元手に新事業を行うというものです。
小規模な工事会社(例えば電気工事や空調工事などの場合)やコンサルティング会社などの場合,大がかりな機械工具などがなくとも,事業を行えますので,旧会社の破産に伴い,このような手法をお勧めすることもあります。
ただし,この手法は債権者の誤解を招きやすいので,資産の混同を疑われるようなことを排して進める必要があります。