大阪の破産の費用

 昨年1年の大阪地方裁判所(堺支部,岸和田支部を除く)での破産申立事件の件数は6000件弱であったと思われます。
 多い年では1万件を超えていたので,この20年間では比較的少ない方に属すると思われますが,それでも6000件という件数にはそれなりのボリューム感があるところです。
6000件のうち,大型の倒産案件はごくわずかであって,大半は個人の同時廃止事件であるため,詳細な書類を整えれば,破産管財人が選任されたり,裁判所に行ったりすることがなく,終了することが多いと思われます。
 当事務所で取り扱うような管財人がつく破産手続は,地方によって運用が異なります。
その中でも,大規模庁とされる東京と大阪の裁判所は裁判官,弁護士が研鑽を重ねており,特別な運用を試行し,その運用が全国に広がることがしばしばみられます。
 例えば,大阪地裁の少額管財と言われていた制度は非常に画期的で,現在,大阪地裁はその制度を原則として,会社の破産事件を行っています。
従前,大阪地裁を含む全国の裁判所は,会社の破産事件に際しては,予め管財人に納める金額を明確に定めておらず概ね100万円程度としていたのですが,これを一律205,000円にしました。
 これは,中小企業の多い大阪において,はじめに破産管財人に納める費用を100万円にすると,その捻出ができず,破産の申し立てができず,いわば夜逃げ状態になる債務者の方が一定以上おられました。夜逃げ状態になると,回収を急いだ者,強く回収した者が有利になり,必ずしも公平とはいえませんでした。
 大阪地方裁判所は管財人に納めるべき金額を最低205,000円にすることで,破産法による債務の処理を進捗させ,経営者の再起をはかりやすくしたのだと推測されます。
 もっとも,それまで100万円を経費として受領し,業務を行っていた破産管財人にとって,それが大幅に減額されることになると,管財業務を十分に行えない可能性があります。その問題を解消するため,裁判所は書式を整備し,申立代理人に破産申立て前の準備事項を明らかにして,管財人ではなく,申立代理人弁護士にある程度の交通整理を行うことを求めるようになりました。
 この制度は大阪地方裁判所では完全に定着し,私の知る限り,近畿圏内の裁判所においても同様の対応をしてくれています。
 そのため,大阪府下のみならず近畿圏では,会社経営が行き詰まったとき,従前より比較的安価(合計150万円程度の準備があれば)に破産の申し立てができる場面が増えております。
 他方,その他の地方では,いまだ従来の方式をとっているところがあり,大阪の裁判所に慣れてしまうと,他地方の裁判所で破産を申し立てるとき,裁判所から指示される管財人への引継金が高額で驚くことがあります。
 そこで,他地方の裁判所で申し立てを行う場合は事前の確認が必要になります。
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