小売業・卸売業

 おおよそ,事業を営まれる以上,不幸にして破産に至るケースは一定の割合存在します。
もっとも,私たちの経験した事案から,業種によって,特徴があるように思いますのでご紹介いたします。
第3回は小売業,卸売業です。
小売業や卸売業は,大規模店やインターネットの発達に伴い,実店舗での販売が伸び悩み,破産に至るというケースが最近はよく見受けられます。
小売業・卸売業の破産においては殆どの確率で,仕入元が債権者になります。破産の所謂X-DAYは月末に定められることが多く,月末に販売先からの買掛金の回収を待ち,仕入元への支払いは停止して,破産の申立準備に入るのが定石といえます。
もっとも,仕入元への配慮から,月末の支払いを終えた後,月初めに破産を決意される方もまれにおられます。この場合は,それまでの労働者への支払いや破産費用の捻出を翌月に入金される売掛金で確保せざるをえないことがありますが,税金の滞納などがあると売掛金が先に差押えられてしまい,結局破産費用の捻出ができなかったということになりかねないので,注意が必要です。
さらに,小売業・卸売業の破産の場合,問題になるのが,在庫です。
在庫は一般的には破産する会社の財産ですので,仕入元が返してほしいと言ってきても,返却はできません(在庫の返品を行うと,結局仕入元と破産管財人の間で紛争が起こり,かえって仕入元に迷惑がかかることがあります)。
しかし,食品や生鮮品などについては廃棄せざるを得なくなる場面が多々あります。これは一つは賞味期限の問題から,もう一つは食品のトレーサビリティの問題から,買手が付かないケースがあるからです。このような場合は例外的に仕入元に在庫の返還を行うことがあります。
また,製造業の場合もそうですが,卸売業の場合でも,販売先から,「今ある分だけでも売ってほしい」と言われることがあります。この場合は,定価で販売することと,また,販売代金を確実に早期に支払う事を条件に販売することが多いといえます。
最近は「インターネットの販売サイトで,高評価・高順位なので,それをそのまま利用して別会社で事業を続けたい」とおっしゃる経営者の方もおられます。一般的に破産に伴って事業を残す場合,営業譲渡を用いることが多いのですが,営業譲渡によってそのネット販売店を新会社に引き継ぐのは,販売サイトの規約上難しいことが多いようです。
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