我々の業務も当然ながら,震災の影響を受けております。というのは民事再生が難しくなっているという実感があります。
民事再生などの自力再生の手続きは,当該会社が自力で将来黒字を計上できることが前提となっています。
そのために部門や人員をリストラすることがしばしばありますが,事業規模を縮小しすぎると,売上そのものが下がるため,利益が些少になってしまうこともあります。利益が些少になると配当率が下がるため,債権者の同意を得難い再生計画案となってしまいます。
そこで,まずは事業規模を縮小せず,部門毎での黒字化を目指すのですが,ここに来て震災の影響で売上見込が立たないため,黒字化の目途が全く立たず,自力再生が難しい事案が増えているように感じます。
自力再生が難しい事例
最近トピックになっている例でいえば,和牛オーナー制度を運営していた「株式会社安愚楽牧場」などが挙げられでしょう。
帝国データバンクによると,同社の民事再生手続は,有効な資産を譲渡して企業を清算する所謂「清算型」とされていますが,震災に伴う風評被害で売上の目途が立たないため,自力再生ができないというのも理解できるところです。
また,同社では,管理している14万頭の和牛の存命を図るため,破産ではなく民事再生を選択したというのも興味深いです。
確かに,破産手続の場合,特殊な場合を除いては申立と同時に事業が廃止され,従業員も解雇されてしまいます。継続して管理が必要な事業を営んでいる場合には,混乱が生じる可能性が高いといえます。
そこで,事業を清算するにあたってソフトランディングを目指して民事再生を行う場合もあります。
和牛と人命を比較するのは不適切かもしれませんが,医療法人などでも自力再建を目的とせず,ソフトランディングを目指して民事再生を申し立てることがあります。